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2026/9/1

レジリエンス―問題が起きないことが、強さではない 

来週、フランスで開催される母校の同窓会組織「上智大学ソフィア会」の大会で、私は現地の同窓生とともに司会を務めることになっています。今回の大会のテーマは、「Resilience(レジリエンス)」。恥ずかしながら、私はこの言葉をきちんと理解していませんでした。調べてみると、一般的には「回復力」「復元力」などと訳されます。 

しかし、その意味を考えているうちに、単に困難から元の状態に戻ることだけではなく、困難を乗り越え、その経験から学び、未来に向かって成長していく力なのではないかと思うようになりました。そして考えてみると、私たちが長年携わってきたプロジェクトマネジメントの世界は、まさにレジリエンスが求められる世界です。 

  

プロジェクトから「想定外」はなくせない 

プロジェクトでは、さまざまなことが起こります。計画していたスケジュールが遅れる。重要な情報が共有されていなかった。「伝えたつもり」が相手には伝わっていなかった。同じ言葉を使っているのに、お互いがまったく違うことを想像していた。時には、それが大きな「事件」になることもありますし、一歩間違えれば大きな問題になっていた「ヒヤリ」で終わることもあります。

特にグローバルプロジェクトでは、言葉だけでなく、文化、商習慣、組織、立場、経験、さらには仕事に対する「当たり前」そのものが違う人たちが、1つの目標に向かって仕事をします。どれだけ優秀なメンバーを集め、綿密な計画を立てても、ミスコミュニケーションや認識のズレを完全になくすことは、おそらくできません。 

もちろん、私たちプロジェクトマネジャーは、それらをできる限り未然に防ごうとします。しかし、「問題を起こさないこと」だけをプロジェクトの強さだと考えてしまうと、どこかに無理が生じます。人が仕事をする以上、想定外のことは起こる。だからこそ大切なのは、問題が起きた「その後」なのではないでしょうか。 

  

「誰が悪い」から始めない 

何か問題が起きた時、人はどうしても原因を探します。「私はちゃんと説明した」「そんな話は聞いていない」「先方の確認が遅かった」「そもそもあの部署が決めなかったからだ」――。プロジェクトの現場で、私たちも何度となくこうした場面を見てきました。原因を明らかにすることは必要です。責任の所在を曖昧にしてよいということでもありません。

しかし、原因を究明することと、誰かを責めることは違います。問題が起きた瞬間にチームが「自分たちを守ること」に向かってしまえば、組織の壁は一気に高くなります。 

反対に「何が起きたのか。そして、私たちはここからどうするのか」と考えられるチームは強い。 

私たちピーエムグローバルが大切にしている「One Team」という考え方も、こういう場面でこそ問われるものだと思います。プロジェクトが順調な時に「One Team」と言うことは簡単です。難しいのは、問題が起きた時です。そんな時にも、お客様、コンサルタント、システムベンダー、海外拠点など、それぞれの立場を超えて、同じ側に立って問題を見ることができるか。そこにチームとしてのレジリエンスが表れるのだと思います。 

  

計画ではなく、目的に戻る 

もう1つ、プロジェクトにおけるレジリエンスで重要だと思うのは、変化に対応する力です。計画どおりに進まなくなった時、「当初の計画に戻すこと」だけに一生懸命になってしまうことがあります。しかし、そもそもプロジェクトは、計画を守るために存在しているわけではありません。その先に実現したいビジネスの目的があります。ピーエムグローバルが大切にしている「Business First」も、ここにつながります。予定外のことが起きた時こそ「そもそも、私たちは何を実現したかったのか」に立ち返る。そして必要であれば、やり方を変える。優先順位を変える。時には、これまで決めたことを捨てる。元の計画に戻すことではなく、目的に向かってもう一度進み始めること。これもまた、レジリエンスなのだと思います。 

  

違いを乗り越える力 

そしてグローバルプロジェクトでは、もうひとつ大切なことがあります。それは、相手の立場にもう一度入り直すことです。ミスコミュニケーションが起きると、つい「こちらは正しい」「相手が理解していない」と考えてしまいます。しかし、国や文化、組織が違えば、同じ出来事がまったく違って見えることがあります。「なぜ分かってくれないのか」ではなく「なぜ相手には、そう見えたのだろう」と考えてみる。その瞬間、止まっていたコミュニケーションが再び動き始めることがあります。私たちが20年以上のグローバルプロジェクトで学んできた「Global Expertise」とは、単に英語が話せることでも、海外の仕事を知っていることでもありません。違いがあることを前提として、それでも人と人をつなぎ直し、一緒に前へ進めること。それもまた、グローバルな仕事に必要なレジリエンスなのではないでしょうか。 

  

元に戻るだけではなく、前より強くなる 

レジリエンスについて考えていて、私が一番大切だと思ったのはここです。問題が起きたあと、元の状態に戻れば、それで終わりなのでしょうか。せっかく失敗したのであれば、その経験を次に生かしたい。「あの時、もっと早く声をかければよかった」「あのメールだけで済ませず、直接話せばよかった」「あの小さな違和感を放置しなければよかった」――。そうした1つひとつの経験が、次の判断を変えていきます。だから私たちは、プロジェクトの現場で3つのことを大切にしたいと思っています。 

①早く向き合うこと。 
小さな違和感を放置せず、「ヒヤリ」の段階で声をかける。 

②人ではなく、問題に向き合うこと。 
誰のせいかを考える前に、何が起き、どうすれば前へ進めるかを考える。 

③元に戻すだけで終わらないこと。 
起きたことから学び、次のプロジェクト、次のチームを少しでも強くする。 

考えてみれば、私たち自身も、これまで多くの失敗や想定外を経験してきました。それでも、そのたびにお客様や仲間と一緒に考え、立て直し、また前へ進んできました。問題が起きないチームが、強いチームなのではない。問題が起きた時に、互いを責めることなく向き合い、学び、以前より強いチームとして前へ進める。それが、プロジェクトにおける「レジリエンス」なのだと、今回この言葉に出会って改めて感じています。 

そしてそれは、プロジェクトだけではなく、人と人、組織と組織、国と国がつながって何かを生み出していくために、これからますます必要になる力なのかもしれません。 

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