グローバルのヒント
Indo Watcher
第6回 「ジュガード」との付き合い方
最近、ある取引先から一冊の本を薦められた。『インド人コンサルタントが教える インドビジネスのルール』(パンドランギ・シャンカル・加茂純著、中経出版)という本だ。なんとも心をくすぐるタイトルである。日本人から見たインドとは全く違う観点で、インド人と上手く付き合うヒントが何か書かれているのでは、との期待を込めて読んでみた。
早速、聞いたこともない言葉に出会う。「ジュガード」(「ジュガール」とも)という言葉だ。これは、ヒンディー語で、「斬新な工夫による応急処置」を意味するそうで、さらには、「倹約精神に富み、柔軟かつ包括的で、大部分はインド人が日々の生活の中で生じる問題を間に合わせで即座に何とかする」、と書いてある。あの日産のカルロス・ゴーンCEOもジュガード・イノベーションを呼びかけているとか。
一方で、こうした「ジュガード」力を過信するケースもあるそうだ。インド人は、計画を立案する場面においては、計画を立てても変更されるのであれば、初めからあまり詳細に計画を立てる意味はない、と考えているフシがある。結局、最後は「ジュガード」の力でなんとかできる、ということらしい。確かに弊社で関わっているインドのシステム会社との開発プロジェクトでも、あまり計画どおりに進捗することがない。むしろ計画がコロコロと変更されながら進む印象すらある。万事詳細を検討してから取り組む日本人としては、なんともストレスがかかるプロジェクトの進め方である。
逆に言えば、日本人的発想で段取りよくプロジェクトの計画を進めながらも、上手く行かなかった場合や更なる改善を検討する場面においては、こうした「ジュガード」の知恵を活かして解決にあたると、よりいい結果が導き出せるかも知れない。どちらの国のやり方がいいとか、悪いとかの議論をする前に、お互いの考え方の融合を図ってみてはどうかと。
ゴーン氏が先のジュガード・イノベーションで、「インドのような新興国に行って、単に製品を持ち帰ってくるのではなく、新しいプロセスや全く新しい考え方など、何かを学んでくるべき」と語っている。日本企業・日本人もこの「ジュガード」をよく学んで、インドとのよりよい関係を構築してみてはどうか。