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グローバルのヒント

木暮知之のインサイト

2024年12月27日

イマーシブ研修で他者になりきれる理由

他者を知るために他者になりきる―。今回はイマーシブ研修で他者の人格に没入できる仕掛けについてお伝えします。

 

キャラクター造形は具体的に。

イマーシブ研修では登場人物の職業や肩書など社会的な属性をはじめ、性格、癖、行動の傾向など個性やパーソナリティーに至るまで具体的に設定します。はっきりしている方が、自分がなりきる人物のイメージが湧きやすく、行動パターンや思考様式まで想像しやすくなるからです。例えば「目的のためなら手段を選ばない剛腕政治家」「上司にはこびへつらう一方、部下には理不尽な要求を強いるパワハラ営業課長」「世界の誰よりも賢いと思っている起業家」といった具合です。さらに、家族構成や家庭環境、嗜好や特技、抱えている悩みなど、さまざま情報を加えながら、参加者が人物のイメージを膨らませやすいようにしていきます。自分のイメージに合致している実在の人物や著名人を思い浮かべても構いません。

 

キャラ設定に基づいた行動を。

キャラクターを具体的に思い浮かべることができたら、その人物となって行動します。ここでは、実際に動いてみることが大切です。性格に基づく思考回路を想像し、行動に移すことで本人に近づくことができます。セリフはありません。話す内容は自分で考えます。話し方も同様です。大げさな身振り手振りで話す人なのか、自信なさそうに小声でささやくように語る人なのか、設定に合った振る舞いが求められます。相手の話を聞く際の態度も重要です。「聞く」という行為は受け身の行為だと思われがちですが、聞き方から相手に伝わるメッセージは意外と無視できません。ボディーランゲージは時に雄弁。身を乗り出して聞いているのか、後ろに反り返っているのか、聞く姿勢だけで印象も変わります。相手の話に耳を傾けず、発言を途中で遮って自分の話を始めることもできるのです。そうした肉付けができるのも登場人物の具体的な設定があればこそ。人物像のイメージを膨らませながら、自分がさらに息を吹き込むことで役柄との距離が近づきます。演じるキャラに近づくことこそが「人格への没入」への第1歩なのです。

 

キャラと一体化した参加者が思い思いの動きを始めると、話はどう進むのでしょうか。次回は進行について説明します。